ど素人用 リアル・システムキッチン

私は、外食を控え、自炊をしております。
この、自炊というやつですが、一般になかなかに続かないものです。それはなぜなのか?

めんどくさい

この一言に尽きます。

リアル・システムキッチン・実践篇など、(当然やったことはないですが)非常によいお話なんでしょうが、これを実践できる人はかなり手慣れた人です。
一般ピープルである私たちがまねできるとはとても思えません。

つまり、我々が学ぶべきものは、道場六三郎の鮮やかな料理でも、山岡士郎の作る究極のメニューでもなく、毎日続けることができるレベルの料理です。これ基本。テストに出ます。

目的

目的は「実際問題、どうやれば自炊できるのか」というものであり、究極に食費を切り詰めるとか、そんなことはどうでもよい。目的が異なりますので、先の参照エントリーを否定するものではありません。というか、私にはとうていできないだろうなと思っただけで、否定するようなレベルにありません。

ただ、見て「そうなんだ、こんな調味料や食材が必要なんだ」と思って、スーパーやらに買いに行ったあげくに、一ヶ月後には蓋も開けられていない調味料やら、腐った野菜やらが散乱することになるのを見るのは忍びないわけです。

前提とする準備

大物は次の通りです。
  • 冷蔵庫+冷凍庫
  • ガスコンロ一口(電気コンロやらIHでもよい)
  • 炊飯器
  • 電子レンジ
  • まな板+αを置く場所
  • 流し
  • 食材置き場(冷蔵庫以外)

冷凍庫は必須です。なぜなら、あなたはものを腐らせるからです。毎日料理をできるようになればよいのですが、最初からは無理ですし、食材をあまらせます。あるいはあまらせないようにと大量に作って、料理をあまらせます。
カレーを四日分作るのはよいですが、毎日カレーを食べますか?それでもよいですが、一番よいのは冷凍しておくことです。

あまらせないように、少しづつ食材を使おうなんて高等なことは考えてはいけません。あなたには無理なんです。そして私にも。

小物は次の通りです。(食器は除いています。)
  • 大鍋一つ
  • フライパン一つ
  • まな板(まな板になる薄い紙もありますが、100円ショップでもいいからまな板を)
  • クレラップ*1
  • 包丁
  • 皮むき器
  • 野菜のスライサー

最初は100円ショップで十分です。なぜかと言えば、あなたは飽きてやめてしまうかもしれないからです。そして、やめたくなったらやめてもいいんです。「高いもの買ったから…」と悩みながら続けたり、「やめて無駄になった」と後悔するのは馬鹿馬鹿しいでしょう?
できるようになってからよいものを入手すればよいのです。私なんてよいものを入手する気は全くありません。

スライサーはたぶん100円ショップにはありませんね。これは少し贅沢なのですが、あなた、ど素人ですから、タマネギを小さくはカットできないでしょう。ざくざくといい加減に切る調理ならよいですが、やはりそれだけとは限りません。そんなことで苦労してやる気をなくすくらいなら、こういう器具に頼った方がよいのです。「いや、包丁で頑張る」というなら、それもありです。私は基本的には包丁を使います。

さじやら計量カップやらおたまやら必要じゃないのかと思うかもしれませんが、なくてもなんとかなるものです。必要だと思ったら適宜買いそろえて下さい。

調味料

調味料は、次のものが必要になります。2000円ほど握りしめて近所のスーパーに行って下さい。

  • あじ
  • 砂糖(スティック)
  • こしょう(塩こしょう可)
  • こいくち醤油
  • 醸造
  • みりん風調味料(焼酎でもよい)
  • ポン酢
  • 油+ごま油

醤油は1リットルで150円出せば買えます。使い切る自信がないならもっと小さいものでもよいでしょう。酢は500mlで80円くらいで穀物酢が買えるんじゃないでしょうか。ミツカンやらタマノイやらでもいいですが、PB商品でそれくらいです。
みりんは本みりんなどは必要ありません。例えばミツカンの商品名「ほんてり」でよいでしょう。「てり」だけで言えば本みりんより上です。ちょっと高くて1リットル数百円ですね。安い焼酎に砂糖をぶち込むことで代用してもよいでしょう。
ポン酢は、単に好みなんですが、あらゆるものを食べられる味にしてくれます。よく売ってるミツカン味ぽんなら、360ミリリットルで200円強でしょうか。200円を切っているものもあることでしょう。
油はさすがに必須ですね。好きなものを買って下さい。ごま油は、あらゆるものの味を調えるために使います。

砂糖は、もちろんグラニュー糖をちゃんと買うならそれでもよいのですが、そんなに使うかどうかも分かりませんから、スティックで。うちはヨーグルトについてくるパック砂糖を使います。

だしを取るために、だしの素があってもよいかもしれません。しかし、だしなんてとらなくても料理はできます。また味噌は使いたくなったら買って下さい。

ちなみに、「安いものがすばらしい」と言っているわけではありません。ただ、「スタートはこれでも十分だよ」、と敷居を下げているのです。その後好みに合わせて国産丸大豆がどうのとか、選びたくなったらそうしましょう。

乾物とスパイス

基本的には買いません。
必要になったら、チューブのからしやら、わさびやらを買って下さい。生姜もチューブにしましょう。唐辛子は好みで。鷹の爪とかも最初は用意しなくて構いません。使うときに買いましょう。

主食

基本的には私が「米」を食べているので米を買いましょうとしか言えません。

しかし、この米は大事です。というのは、「とりあえず米だけ炊く」ということがど素人でも入りやすい部分だからです。

米だけ炊いてどうするんだと思うかもしれませんが、そりゃ、米があれば後は次のようなものでご飯を食べられます。

  • 納豆
  • パックのお総菜
  • ふりかけ、塩辛や昆布など、いわゆる「ご飯の友」
  • インスタント味噌汁
  • 冷凍食品

最初はこれだけを心得て下さい。「とりあえず、ご飯を炊くこと」です。落としぶたがなんなのかとか、料理のさしすせそとか、知らなくても構いません。というか、私は知りません。しかし、ご飯を炊けば「自炊」ができるのです。
そして、あまったご飯は翌日食べられる分は小分けしてラップし、冷蔵庫で保管。どうしてもそれ以上にあまるならば冷凍しましょう。しかし、冷凍はできるだけ避けた方がよいでしょう。

お米のブランドは、とりあえずは何でもいいんじゃないでしょうか。私は、現在は農家から送ってもらっておりますし、おいしくいただいておりますが、「とにかく一番安い米」を選んでいた時期もあります。
あ、無洗米、おすすめですよ。「米をとぐのが面倒」っていう理由であなたの自炊が終わらないために。

主菜系

要するにたんぱく質源。これは、次のものを買います。といって、必ず備蓄するわけではありません。

  • 鶏肉(ムネ肉が安い、もも肉は少し高い、骨付きも安いが食べる部分は少ない)
  • 豚肉(100gで88円とかだったら買っておきましょう、挽肉も可)
  • 卵(必要に応じて買いましょう)
  • 納豆(私は常備しますが、嫌いな人は仕方ありません)
  • ソーセージなど

ここで、基本となるのは「生肉は冷凍しておく」ということです。テストにでまくりです。
当日使う場合は別にして、買った肉は冷凍しておいて、使うときには電子レンジで解凍する。もちろん、分かっているなら前日から冷蔵庫に移してもよいでしょうが、どうせ当日になってからメニューを決めるのですからそういうわけにもいきません。お肉はパックで売っていますが、一般には大きなパックを買ったから安いというわけではありません。ですから、小さなパックを複数買い、毎回の食事でパックを使い切るのがよいでしょう。
なお、牛肉を書いていませんが、もちろん牛肉でも構いません。少しお値段が高めになります。

卵は10個パックを腐らせる場合もありますが、その場合はゆで卵にします。ソーセージは、パスタやらチャーハンやらに使いやすいですので常備しておいてもよいかもしれません。

野菜

野菜は、元のエントリーにもあるように、備蓄できるものとできないものがあります。
できないものは、前日や当日にスーパーで買うのでもよいでしょう。
私は、日持ちする次のものを買います。日持ちすると言っても、さっさと食べた方がいいに決まっていますから、これも大量に買ってはいけません。

  • タマネギ
  • ジャガイモ
  • ニンニク

使う当日や前日に購入するものは次のものです。キノコ以外はどうしてもあまらせることもあるので、冷蔵庫において、次に使いましょう。白菜やらキャベツやらを買ってもよいでしょうが、調子に乗って一玉買ってはいけません。腐らせます。
基本的には使い切りを心がけましょう。

  • 青物
  • 大根(1/2)
  • キノコ(エリンギ・エノキ・ブナシメジ)

在庫管理

基本的にはしません。というか、管理するほどに備蓄していたら、「使わなきゃ使わなきゃ」と心理的に負担になります。
在庫管理をしないといけない状況になるのは、(ど素人のあなたには)既に負け組です。在庫をチェックして補充とか考えている暇があったら、もっと楽しいことを考えましょう。

どうやって料理するんだ

さて、包丁を持ったこともなく、「ガスコンロに火をかけるのはお湯を沸かすためである」と思ってきたあなたは、「これで準備完了」といわれても、次の一手が全く分からないことでしょう。次の順番にステップアップしていけばよいのです。

第一段階

「ご飯を炊く」。これだけです。

ご飯のおかずは適当に買ってきたものにしましょう。ふりかけだのインスタント味噌汁だの、冷凍食品だの、そういうものでもよいのです。
これも立派な「自炊」です。

第二段階以降にあなたが成長したとしても、忙しいときは適宜この第一段階に戻ればいいのです。ストイックに料理をする必要などありません。

なお、スパゲッティなどをメインにする人は、ちょっと話が別ですね。

第二段階

「フライパンを使ってみる」。これだけです。

包丁なんていう危ないものは触ってはいけません。フライパンには油をしき、何か炒めてみましょう。最初から熱しておくのがどうのとか、油をしかなくていい食材がどうのとか、つまらないことは知らなくても構いません。何でも「油をしいてものを入れ、それから火をかける」と思っておいて下さい。

焼くものは次のようなものです。

  • 塩鮭切り身
  • 牛肉・豚肉細切れ類
  • 刻み野菜(もやしOK)

塩鮭については、まあ、お好みで塩だのこしょうだのを加えることになりますが、牛肉や豚肉は好きな調味料を使いましょう。塩こしょうでもよいですし、しょうゆを加えてみると香ばしい香りがしてきます。ごま油だとちょっと変わった風味になります。頑張って買ってきた焼肉のタレをかけてもいいかもしれません。焼いた後でお皿に盛ってからポン酢で食べたりしてもさっぱりします。

さあ、夢が広がってきました。

第三段階

火を使う場合には、「ゆでる」というスキルもあるんです。これは第二段階と同時でもよいでしょう。

先ほど書いた肉やら刻み野菜やらをそのまま水を張った鍋にぶちこみます。で、火をかけます。火の強さなんて適当でも構いません。お肉には「しゃぶしゃぶ用」だの「焼肉用」だの書いてありますが、そんなものは無視したところで、警官は逮捕に来ません。とりあえずぶち込んでしまえばいいんです。あくが浮くかもしれませんが、とりたきゃ取ればいいんです。取らなくても構いません。

で、できあがったものは、ポン酢でいただきましょう。薬味をつけてもよいでしょう。そう、これはれっきとした鍋料理なのです。

第四段階

ついにあなたは「包丁を使う」ことになります。

包丁を使うというと、何だかすごそうです。美味しんぼの読み過ぎで、大根をかつらむきして包丁の腕を鍛えるんだとか知っているかもしれませんが、忘れましょう。拍子木切りだのみじん切りだのいろいろな切り方がありますが、何も知らなくて構いません。ざくざく適当に切って構わないんです。誰も怒りませんから。

何を切るのかといえば、次のようなものです。

  • 肉(鳥ムネ肉のようなでっかいやつや、ブロックになっている肉など)
  • 野菜(刻み野菜でないもの)

芯のような部分やキノコの根っこのような部分(石突き)は切り取って捨てましょう。タマネギは外側の皮は捨てます。

ここで、大きな問題として、じゃがいもとニンジン、大根が出てきます。これらには皮があるんです。この「皮をむく」部分は全て「皮むき器」を使います。包丁を使ってはいけません。だって、あなたは(私も)素人です。そんなことでけがをしても馬鹿馬鹿しいじゃないですか。

また、スライサーが使えるものは使ってもよいでしょう。

で、切って適当な大きさにしたら、今度は先ほどのスキル「焼く」「ゆでる」を使います。「普通はこんなのは焼かないんじゃないか」とか悩む必要はありません。焼いてみましょう。意外においしいかもしれません。

ここまで来ると、他にも豆腐だとかキムチだとかご飯だとか、いろんなものを入れたくなりますね。
じゃあ、それもやってみて下さい。

第五段階

みりん・酢・しょうゆを使います。
「みりん」ってどこで使うんだろう?と思っている人は日本人の7割に及ぶといわれます。(脳内調べ。)

基本はこれです。というか、これだけを覚えて帰って下さい。

みりんとしょうゆを混ぜる

はい。それだけです。つまり、しょうゆを使うところでみりんを混ぜます。「そんな簡単なものじゃないよ」という周りの雑音はひとまず無視して下さい。どれくらいの割合で混ぜるのかといえば一対一です。なぜかといえば、素人には「大さじ2と大さじ1」とか覚えられないからです。
味を見て後で加えても構いませんから、とりあえず混ぜてみましょう。

で、混ぜてどうするのか。二つの用法があります。

  • 焼く系→混ぜてそのまま調味料として使う
  • ゆでる系→水のなかにそれを入れて、それでゆでる

簡単ですね。メインはゆでる系でしょう。でも、焼く系でも構いません。タマネギを適当に切って、豚肉と一緒にフライパンにぶち込んで、しょうゆとみりんを入れて、チューブの生姜を練りだして炒めれば、「これが豚肉の生姜焼きです」と威張っても構いません。

お酢もしょうゆと混ぜて使いましょう。しょうゆ+みりん+酢 なんてのもありですね。砂糖を加えちゃってもいいですよ。

思えば遠くに来たものです。

第六段階〜旅立ち〜

もう、ここまで来れば、あなたは大丈夫です。拍子木切りとか、だしの取り方とか、そういう知識はゼロかもしれませんが、何やら人間の食べるものを作ることができます。
また、忙しくなれば、適宜段階を後戻りして、手抜きをすることもできます。

最後に、最終奥義です。

クックパッドを見る

ここまで来ることができたという、その強い意志があれば、あとはレシピを見ながら作るのも簡単でしょう。健闘を祈ります。

むすびに

以上、ど素人用 リアル・システムキッチン・第一回?をお届けしました。(追記エントリー d:id:atzy:20090109:p1 では、後片付けについて。)

ストイックにすばらしい省力化を目指すことは、ど素人用リアル・システムキッチンの目的ではありません。手を抜きながら、とりあえず自炊を開始し、継続することが最大の目的です。なので、みなさまご自由に上記からさらに省いたり、あるいは逆に足していったりすることで自炊を続けることができればいいんじゃないかと思っています。

ただ、わたしは上のリスト+αを週一回補充もなにもしていませんが、この1年間自分の台所を回しています。というお話、です。

*1:くっつかないから