鎮痛剤を選ぶときの基礎知識

本日は、たまに風邪による(と思われる)頭痛がするので、仕事がはかどりませんでした。

この痛みをとる薬というのはどうやって選べばよいのでしょうか?

いくつか今日は覚えて帰って下さい。

  • 鎮痛薬は、大抵は、プロスタグランジンという痛みを発生させる原因となる物質を作らせないことで効く(COX阻害)。
  • 市販鎮痛薬は、主に「アスピリン」「イブプロフェン」「アセトアミノフェン」である。
  • 同じブランドの製品でも成分は異なることがある。成分をきちんとチェックするべき。

お薬

大体、鎮痛剤というのはノーシンだのバファリンだのといっぱいありますが、基本的にはプロスタグランジン(PG)の合成を阻害するものです。
正確に言えば、アラキドン酸からプロスタグランジンを合成するシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害する(例えば、別の物質に変えてしまう)というものであり、COX阻害と呼ばれます。しかし、このあたりの詳しい話は面倒なので*1ので割愛いたします。
こういった薬は、痛みを抑えるだけで痛みの原因を取り除くものではありません。(当たり前です。)

この鎮痛剤で有名な物質を挙げていきましょう。ちなみに、鎮痛剤は解熱剤の薬効をもっていたりしますから熱を下げるのに処方されるかもしれません。

アスピリン(アセチルサリチル酸)

サリチル酸は柳の葉に含まれて薬効がありとかなんとかいったことは高校の有機化学でも触れられるかと思います。サリチル酸ベンゼン環のメタ位にヒドロキシ基とカルボキシル基がついた形だとか、サリチル酸をアセチル化したらできるんだとかいったことを学び、アセチルサリチル酸アスピリンだよと教わります。(ちなみに、その時サリチル酸エステル化したサリチル酸メチルが消炎剤(サロンパスみたいなやつ)に使えるのだということも教わります。)

アスピリン?ああ、あのアンプルみたいなのに入ったやつね。でも、飲んだことないぜ?」と思うかもしれませんが、市販薬に入ってます。私はこれが嫌いでした。おなかが痛くなります。また小児用は許可されていません。

イブプロフェン

何となく聞いたことがある方も多いでしょう。痛み一回イブ三錠のイブですが、主成分のイブプロフェンはこれです。どういう物質かは忘れちゃいました。これは現在は市販薬でも非常に広く使われており、鎮痛剤の主力の一つです。
また、ロキソプロフェンナトリウムというイブプロフェンに似た物質があり、これを使ったロキソニンが有名です。ロキソニンにはゾロがたくさんありますが、基本的には同じです。ゾロでもいいと思いますが、ロキソニン自体が安いのでわざわざゾロを選ぶ意味も少ないかと思います。

イブプロフェンアスピリンよりも副作用が少なく、効き目が強いといわれますが、これも小児用には市販薬で入手することはできません。ロキソニンは市販薬では入手できません*2ので処方してもらう必要があります。この前、歯医者さんででロキソニンを処方してもらいました。効くんですが、ロキソニンはプロドラッグ*3と呼ばれる、効き目が遅い種類ですから、「今すぐ効いてほしいんだよ!」というときは、後述のカロナールとかボルタレンにしましょう。

アセトアミノフェン

イブプロフェンと並ぶ市販薬鎮痛剤の成分です。子供も使うことができます。無難なお薬です。実はこのアセトアミノフェンは、COX阻害で効いているわけではありません。そして何で効いているのかもよく分かりません。ただ、効くんだからいいじゃんということになっております。

子供でも使えるだけあって薬効は穏やかになりますが、私は歯医者さんでこれを処方してもらったことがあります。その場合はカロナールという名前になりますが、ゾロもあります。カロナールの方がロキソニンよりも効き目は緩いとかいいますが、私は特に体感したことはありません。

なお、インフルエンザ発症時にはこのアセトアミノフェン系の解熱・鎮痛剤が投与されることになります。(というか、他のものが場合によって禁忌となります。)

ジクロフェナク

商品名ボルタレンで有名な薬です。これもゾロだらけです。市販薬ではありませんので、処方してもらうと飲めます。すごく効く(ロキソニンよりも上)と聞きましたが、処方してもらったことがないので知りません。
あまりに歯が痛かったので、処方してもらおうかなと思いましたが、そこに至りませんでした。

素人でなおかつ「ジクロフェナク?何か聞いたことあるな。」と思った人はたぶん、ジクロフェナクではなく、フェルビナクではないでしょうか?鎮痛剤というか消炎剤で湿布に配合したりします。ジクロフェナクも鎮痛作用があるはずです。その消炎の世界ではインドメタシンも有名です。「フェルビナク配合」「インドメタシン配合」「タウリン1000mg」などといわれると、何かすごそうです。これらの名前は広告に使いやすい名前を選んで薬品会社によって命名されています*4

お薬を買うとき

ですから、あなたが薬を買うときは「ノーシン」とか「バファリン」という名前を見るのも大事ですが、その成分が、「アスピリンかな、イブプロフェンかな、アセトアミノフェンかな」と見て下さい*5

で、「あー。私、イブプロフェンは効かないのよね−。アセトアミノフェン配合のセデスが効くのよ」と友人に高らかに宣言したときの、友人の哀れむような、軽蔑するような、そのような目を見ることができる。これが薬マニアにとってのたまらない愉悦感なのです。

ちなみに、半端に覚えて「バファリンアスピリン」などと短絡してしまいますと「実は、バファリンエルはアセトアミノフェンなんだよね」などとやられますから、ちゃんと覚えてから使いましょう。ちなみに私は覚えてません。いちいち商品を見ます。

まあ、「小児用」とあったらだいたい「アセトアミノフェン」とかくらいは覚えておいてもよいかもしれません。

あと、薬のブランドが一緒でも、どれを使ってるかは違うんですから「ナロンエースが効いたからナロン錠も効くかな」とか考える暇があったら、成分を見て下さい。さらに、成分を見て素人考えする暇があったら、薬屋で聞いて下さい。

さらにちなみに、ナロンエースはCMで「イブプロフェンエテンザミド配合」と高らかに歌い上げていますが、このエテンザミドも鎮痛作用を持ちます。エテンザミド配合の市販薬もよくあります。でも、ナロンエースイブプロフェン系と覚えておくのでよいでしょう。

薬剤師

ただ、薬の勉強をするのはよいと思いますが、素人考えではなくてちゃんと薬剤師さんに相談してから決めるのがよいと思います。マジで。
というか、そもそも私は仕方のないとき(処方されたとき)以外は薬をあまり飲みたくありません。鎮痛剤だって、胃腸、肝臓や腎臓に対する副作用があるんです。

*1:早い話が忘れてしまった。

*2:追記:2011年になって、処方薬でなく市販薬として26年ぶりに許可されたようです。

*3:ロキソニンの成分そのものが薬効を示すのでなく、体内で変化した物質が薬効を示します。このようなものをプロドラッグと呼びます。

*4:嘘ですから信用しないで下さい。

*5:なお、ここでは挙げませんでしたがピリン系と呼ばれる別個のものもあり、そこではイソプロピルアンチピリンとかスルピリンといったものが含まれます。アスピリンを含め、今回紹介したものは非ピリン系と呼ばれます。ピリン系ではアレルギーが起こることがありますので注意して下さい。セデスハイとかサリドンとか。